日本での一般的な就労ビザは、「技術・人文知識・国際業務」と言います。この言い方は長いので、技人国ビザ(ぎじんこく)と表記します。
留学生が技人国ビザを取得するには、「就職先を先に決める」必要があり、あなたの学歴(最も高い学歴)によって、働ける仕事を確認する方法が4パターンあります。
下記の目次からあなたが該当する学歴をクリックして内容を確認してください。
技人国ビザの仕事内容は、学歴と関係している仕事(現場労働はNG)または、言語を使う仕事、海外との取引業務などに限られています。
それでは、細かく見ていきましょう。
技人国ビザを取得するまでの流れ
- 就職先を探す
- 内定をもらったら、技人国ビザに変更申請をする
- 許可通知をもらう
- 技人国ビザの在留カードをもらったら、就労開始する
目次
日本または海外で「短期大学」「大学」「大学院」のいずれかを卒業している場合
日本でも、海外でも「短期大学」「大学」「大学院」のどれかを卒業していて、学位(短期大学士・学士・修士・博士)を持っていれば、日本の技人国ビザの申請では有利です。(卒業予定の場合は、卒業見込証明書が必要)
「短期大学」「大学」「大学院」は長いので、以下では「大学等」と記載します。
ただし大学等を卒業していても、学位「短期大学士」「学士」「修士」「博士」がない学校や、証明書をなくしてしまい再発行もできない場合には、大学等を卒業しているとは認められないので注意してください。
※以下では、卒業している=学位を持っていることを前提として解説していきます。
履修科目を確認する
技人国ビザは、「技術・人文知識・国際業務」の名前の通り、多くの仕事内容のビザが含まれています。
具体的には、学校で勉強した内容と関連する業務として「技術=エンジニア業務」「人文知識=その他の仕事(現場労働を除く)」「国際業務=言語の仕事・海外取引業務」のイメージです。
この中で、「技術と人文知識」「国際業務」に分けて考えた方がわかりやすいので、分けてご説明します。
技術・人文知識について(大学等卒業の場合)
「技術と人文知識」は、学校で勉強した内容と、日本で行う仕事内容に関連性があることが求められています。
ただし大学等を卒業していると、この関連性の審査が緩やかになるので、学校で勉強した内容以外の仕事もできる可能性が高くなります。
「技術と人文知識」の具体的な、学歴と仕事内容の関連性は下記のようなイメージです。
学科・コース名 | 仕事内容 |
---|---|
経済・経営 | 営業、マーケティングなど |
簿記・会計 | 経理、財務、経営企画など |
IT系、ウェブ開発 | エンジニア業務 |
語学 | 翻訳・通訳、海外取引業務、語学教師など |
観光・ホテル | 旅行実務、ホテルのフロント業務など |
建設、機械、自動車など | 設計(CAD業務)、施工管理、開発 |
この中で例えば、経済学部を卒業してエンジニア業務の仕事をしたい場合、経済学部の履修科目は多岐にわたるので、経済学部でマーケティングの勉強をしている場合、エンジニア業務でも技人国ビザの資格該当性がある可能性は高いです。
たまに自身で「独学で勉強した」「プログラミングスクールを卒業した」という人がいますが、これは大学等とは関係ないので、このアピールはほとんど意味がないです。
プログラミングスクールに行き勉強したというより、大学等で勉強したことと、仕事内容が少しでもどのように関係しているのかを説明するようにしてください。
国際業務について(大学等卒業の場合)
「国際業務」は、母国語(または大学等で別の言語を勉強している場合は、その言語も含む)を活かして行う仕事、もしくは海外との取引業務、インテリアデザイン業務などが含まれます。
そして、この国際業務の仕事をするには、基本的に3年以上の国際業務の実務経験が必要になります。
しかし、大学等を卒業している場合は、その3年の実務経験が免除となっているため、貿易の仕事や語学教師など言語を使う仕事をすることが可能となっています。
また最初でも説明しましたが、言語を使う仕事の場合、「母国語」か「学校で勉強した言語」のみ可能です。
例えばTOEICのスコアがある、独学で勉強したので中国語が話せるというのは、あまり評価してもらえません。
また技人国ビザでは、現場労働はできないと説明してきましたが、国際業務の中の翻訳・通訳をする場合、例えば外国人のお客様が多い店舗での「アパレル店の販売員」「免税店の店員」「携帯電話の販売員」などであれば技人国ビザの取得可能性はあります。
ただし、翻訳・通訳だからと言って、飲食店での技人国ビザは取得できませんので注意してください。
日本の専門学校を卒業している場合
日本の専門学校を卒業して「専門士」の学位を持っている場合も、技人国ビザの取得は可能です。
ちなみに日本の専門学校でも、専門士の学位がもらえない学校もあるので注意してください。専門士の学位がない場合は、技人国ビザの取得は難しくなります。
また専門学校卒業の場合は「日本の専門学校」のみ認められているので、「海外の専門学校」は認められていません。
専門学校卒業の場合も、技人国ビザを「技術・人文知識」と「国際業務」に分けて考えたほうがわかりやすいので、分けて説明します。
日本の専門学校を卒業して専門士を持っている場合、専門学校で勉強した内容と日本で行う仕事内容に強い関連性が必要になります。
大学等を卒業した場合は、関連性は緩く審査されますが、専門学校の場合は厳しく審査されます。
技術・人文知識について(専門学校卒業の場合)
わかりやすくイメージとして、学校で勉強した内容と関連する業務のうち「技術=エンジニア業務」「人文知識=それ以外の業務(現場労働を除く)」と考えます。
そして「技術と人文知識」の具体的な、関連性イメージは下記です。
学科・コース名 | 仕事内容 |
---|---|
ビジネス | 営業、マーケティングなど |
IT系、ウェブ開発 | エンジニア業務 |
翻訳・通訳 | 翻訳・通訳、海外取引業務など |
写真・グラフィックデザイン系 | 広告企画制作、画像処理、動画編集など |
ファッション・デザイン | 店舗販売(外国人のお客様が多い店舗)、デザインなど |
簿記・会計 | 経理、財務、経営企画など |
スポーツビジネス系 | 法人営業、マーケティング、企画など |
上記で、学科別でできる仕事内容を記載しましたが、専門学校の場合は「成績証明書」を確認するほうが確実です。
というのも、実際に勉強している内容は学科名と関係ない場合もあるので、学科名で判断するのではなく、必ず「成績証明書」に記載されている履修科目で判断をしてください。
詳しくは「国際業務」で説明しますが、よく「翻訳・通訳」であれば技人国ビザがとれると思っている人がいますが、間違いです。
翻訳・通訳の仕事ができるのは、大学等を卒業している人か、専門学校の履修科目で「翻訳・通訳」を勉強している人のみなので、注意してください。
翻訳・通訳で仕事を探すのではなく、あなたが勉強した科目を理解して、仕事探しをしてみてください。
ちなみに、音楽や声優の専門学校に通い専門士を取得している場合、履修科目と関連性があるので、技人国ビザが取れるかと思っている人もいると思いますが、歌手や声優として技人国ビザはとれません。
専門士の学位はもらえるかもしれませんが、現場労働の仕事は技人国ビザではできませんので、ほとんど該当する仕事がないので、他の専門学校や大学に通いなおして、他の専門士や学士を取得するしかないので、将来、日本で働きたいと思っている場合は、学校選びにも気を付けて下さい。
国際業務について(専門学校卒業の場合)
「国際業務」の仕事は、母国語(または専門学校で別の言語を勉強している場合は、その言語も含む)を活かして行う仕事、もしくは海外との取引業務、インテリアデザイン業務などを言います。
そして前提として国際業務の仕事は、3年の実務経験が必要になります。
実務経験とは、正社員など(アルバイトなどは不可)で同じ仕事をしていた経験を指すので、留学生の場合は、該当しない場合が多いです。
そしてこの3年の実務経験は、大学等を卒業していれば免除されるため、大学等を卒業している人は「翻訳・通訳」で仕事を探すのは問題ありません。
しかし専門学校卒業の人は、3年の実務経験は免除されないので、学校で「翻訳・通訳」「貿易」などを勉強していないと「国際業務」の仕事はできません。
そのため、まずは「成績証明書」を確認して、履修科目に「国際業務」に該当する内容があるか確認し、ない場合には「技術・人文知識」のどちらかに該当する仕事を探すようにしてください。
該当する学歴がない人
技人国ビザは、原則として「学歴」が必要です。
ただし、学歴がない人の場合でも「実務経験」があれば技人国ビザの取得が可能となっています。
では、必要な実務経験とは何年でしょうか?
これも「技術・人文知識」と「国際業務」で変わりますので、分けて説明していきます。
「技術・人文知識」とは、「技術=エンジニア業務」「人文知識=営業やマーケティング業務など、現場労働以外の業務」を指します。
「国際業務」とは、母国語(実務経験で他言語で仕事していることが証明できる場合は、その言語も含む)を活かして行う仕事、もしくは海外との取引業務、インテリアデザイン業務などを言います。
実務経験で必要な年数とは?
結論から記載すると、下記です。
技人国ビザで必要な実務経験年数
- 「技術・人文知識」=10年
- 「国際業務」=3年
そしてこの実務経験は、正社員や契約社員などのメインで行っていた仕事の経験を指しています。
転職をして複数の会社での実務経験がある場合は、合算することが可能ですが、パートやアルバイトの年数を含めることはできません。
また、自身で経営している場合や、個人事業主として活動していた期間は実務経験として含めることができますが、証明できるかがポイントになります。
実務経験は、「在職証明書」で証明します。
在職証明書は、元勤務先から取得しますので、元勤務先から協力してもらえなかったり、すでに倒産してしまっている場合は、本当に働いていたとしても実務経験としては認められません。
会社経営や個人事業主の場合は、自分で在職証明書を作るしかないのですが、会社経営の場合は、日本でいう登記簿謄本のように、国に会社が登録されていた期間の書類も一緒に提出することで、証明が可能です。
個人事業主の場合は、国によっては個人事業主の証明書があると思うので、ある場合はその証明書を準備し、ない場合は、他に公的に証明できる書類を探します。
見つからない場合は、今までの実績のポートフォリオを作成し、証明するしかないですが、実務経験として認められない場合もあるのでご注意ください。(入管判断になります)
在職証明書の記載方法について
在職証明書の記載がないと、認められない可能性があるので、記載する内容について注意してください。
在職証明書に記載が必要な内容
- 働いていた期間(〇年〇月〇日~〇年〇月〇日)
- 行っていた仕事内容の詳細
- 会社名と住所、電話番号
- 代表者のサインと作成日の日付
実務経験は、1日でも足りないと認められません。
「2010年1月~2019年12月まで勤務」と書いてあっても、本当に10年(または3年)あるのかわかりません。
そのため、2010年1月1日~2019年12月31日までといったように、日付はしっかり記載してもらうようにしましょう。
もう1点の注意点としては「仕事内容」です。
実務経験は、社会人経験ではありません。
日本で行う仕事と同じ仕事の実務経験になりますので、日本で行う仕事と違う仕事の在職証明書を出しても認められません。
そのため、具体的にどのような仕事をしていたのかの詳細を書いてもらいましょう。
「勤勉で優秀で~」という文言がよくありますが、その文言よりも行っていた仕事内容が何だったのかを具体的に書いてもらい、日本で行う仕事と同じであることを証明できるほうが有利になります。
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